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新NISA活用|米国株投資デビューに向けて知っておきたい制度の話

bbachiland@hirapa2023

株式市場がバブル期以来の活況を呈するなか、満を持して2024年1月から新しいNISAがスタートしました。

波に乗って株式投資を始めたい。特に、絶えずイノベーションが起こって右肩上がりに成長する米国株を買ってみたい。そう考える方は多いのではないでしょうか。

しかしご存知のとおり「投資は自己責任」です。
知識のないまま踏み出すことにためらいが生じるのは当然でしょう。

そこで本記事では、新NISAで米国株式投資を始めたい方の3つの疑問に答えます。

この記事でわかること
  • 新NISAはどういう制度で、何がトクなのか
  • NISAで米国株に投資できるのか
  • 注意すべきことは何か

※このあとの解説では2024年1月に始まる新制度を「新NISA」、2023年12月をもって終了した制度を「旧NISA」と呼びます。

新旧で違いがない事項を説明する場合には「NISA」という言い方も使います。

そもそもNISAはどういう制度?

NISAは、イギリスの制度ISA(Individual Savings Account)を手本として2014年に日本で創設された制度の愛称です。イギリスのISAは預金と株式をおもな対象としています。

最初のNはNipponのNで、由来のとおり訳すと「日本版個人貯蓄口座」となります。

NISAは、旧制度の導入時には内容のまま「非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置」と呼ばれていました。

今は多くの場合、和名として「少額投資非課税制度」が使われます。

その名が表すとおり、NISAは、専用の口座内で一定限度額内の上場株式等に投資して得た利益を非課税とする制度です。

手本にしたのが「貯蓄口座」であるにもかかわらず、NISAが株式を対象とすることに違和感をおぼえる方もいるでしょう。その違和感の裏には、日本人が一般に抱く、株式投資に対する不信感があるのかもしれません。

投資による資産形成は、この不信感を取り去ることから始まるといえます。

新NISAは個人資産を株式投資に振り向ける一大キャンペーン

日本の家計は2千兆円あまりの金融資産を保有しています。

現状では、この潤沢な個人金融資産の多くを現預金が占めているため、それを投資へ振り向けることを目的として旧NISAが始まりました。

しかし、欧米諸国と比較すると、現預金の割合はあいかわらず高いままです。
そこで登場したのが、政府が掲げる「資産所得倍増プラン」の一環としての新NISAです。

新NISAは、株式投資を国民にとってより身近なものとし、投資未経験者を投資に向かわせるための一大キャンペーンといえます。

株式投資の増加が経済を活性化し、個人の資産所得が増えるという好循環が期待されています。

NISAでは配当と譲渡益が非課税になる

株式投資から得られる利益には、企業利益の分配である配当と、値上がり後に売却して得られる利益(所得税法上の名称は「配当所得」と「譲渡所得」)があります。
NISAで投資すれば、そのどちらも課税されません。

これらの所得にかかる税率は所得税15%、住民税5%、合計20%です(2037年までは復興特別所得税が加算され、所得税率15.315%、合計20.315%)。

例えば株式投資で100万円の利益が出たとすると、NISA口座以外なら約20万円を税金として納めなければなりません。しかし、NISA口座で投資した場合には、この20万円がすべて自分の手元に残ります。

他口座とNISA口座の損益通算はできない

金融機関で開設できる有価証券取引口座にはNISA以外に以下の3つがあり、納税方法は口座種別によって異なります。

口座種別納税方法
一般口座自分で損益を計算して確定申告する
特定口座(源泉徴収あり)税金は源泉徴収される。金融機関が作成する年間取引報告書をもとに確定申告も選択できる。
特定口座(源泉徴収なし)金融機関が作成する年間取引報告書をもとに確定申告する。

これらの口座で投資した場合は課税されます。
ただし、確定申告で互いの利益と損失を相殺し、損失を翌年以降に繰り越す規定の適用が可能です(国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」)。

一方、NISA口座では税法上の利益だけでなく損失もなかったことになるため、他口座で出た損益との通算ができません。

しかし、NISA口座以外で取引しないならば、通算の必要すらありません。むしろ面倒な課税関係が一切ないのはNISAのメリットといえるでしょう。

投資家に”神”といわれる新NISA|改正4つのポイント

2024年1月に始まる新NISAは投資家の間で評価が高く、大きな話題となっています。
どのように改善されたのか知っておきましょう。

1. 制度が恒久化された

旧NISAでは口座開設期間、非課税期間が定められていましたが、新NISAではそれらの制限がなくなります。いつでもNISA口座の開設が可能で、NISA口座内の投資で生じた利益はずっと非課税です。

「枠を使い切らなければもったいない」と考える必要がないため投資タイミングを計りやすく、長期的な目線での投資もしやすくなるでしょう。

2. 積立投資枠とそれ以外の投資枠が併用可能になった

旧NISAには、未成年者用の「ジュニアNISA」を除くと2つの制度がありました。

一つは投資信託で定期的に少額ずつ投資していく「つみたてNISA」、もう一つはスポット的に上場株式や投資信託などを買い入れる「一般NISA」です。

旧NISAでは、これら2つのうちどちらか片方しか利用できませんでした。

しかし新NISAでは、従来の「つみたてNISA」を引き継いだ「つみたて投資枠」と、同じく「一般NISA」を引き継いだ「成長投資枠」の2つが同時に使えます。

少額ずつの累積投資とスポット的な株式投資を、並行して非課税で行えるようになったわけです。

3. 利用可能枠が拡大された

「少額投資非課税制度」の名が示すとおり、NISAには1年間で投資できる金額と合計投資残高に上限が設定されます。新NISAでは、これらの限度額が旧NISAより大きくなります。

旧「つみたてNISA」は年間40万円・合計800万円、「一般NISA」は年間120万円・合計600万円を限度としていました。

新NISAでは「つみたて投資枠」で年間120万円、「成長投資枠」で年間240万円の投資が可能になります。

2つ併せて限度額1,800万円(そのうち成長投資枠の上限金額は1,200万円)まで非課税で保有できるようになりました(下表)。

【旧NISA】

つみたてNISA一般NISA
年間投資枠40万円120万円
非課税保有限度額800万円600万円

【新NISA】

つみたて投資枠成長投資枠
年間投資枠120万円240万円
非課税保有限度額1,800万円 (うち成長投資枠は1,200万円まで)

投資枠は買い入れた時の価格をもとに管理されるため、買い入れ後に価格が上昇して残高(時価)が増加しても、そのために枠が減ることはありません。

4. 売却分が投資枠として再利用できるようになった

旧NISAでは、NISA口座内の保有資産を売却した場合に、売却分を投資枠として使うことができませんでした。

しかし、新NISAでは、資産を売却した場合、その資産の買入金額分が翌年以降に投資枠として再利用できます。

保有資産残高(買入額基準)を「非課税保有限度額」内に収まるようにするだけでよいため、投資したり必要に応じて取り崩したりと、自由度の高い運用ができるようになります。

新NISAの投資対象は旧NISAとほぼ同じ

NISAの投資対象はおもに株式です。債券や、個人の資産形成にふさわしくない金融商品は投資対象外となっています。ここでは新NISAの投資対象を見ていきましょう。

つみたて投資枠の投資対象

つみたて投資枠で認められている商品は長期の積立・分散投資に適した投資信託で、旧つみたてNISAと同じ考え方に基づいて銘柄が選定されます。

新NISAつみたて投資枠の対象銘柄は、金融庁ホームページで公表されています。米国の代表的な株価指数であるS&P500の動きに連動するよう設計された投資信託も対象となっています。

金融庁「つみたて投資枠対象商品」

成長投資枠の投資対象

新NISAの成長枠の投資対象は従来の一般NISAとほぼ同じで、以下のような対象に投資できるとされています。

  • 株式投資信託
  • 国内上場株
  • 外国上場株
  • 国内ETF
  • 海外ETF
  • 国内REIT
  • 海外REIT

それに対して、以下のような商品は対象外です。

  • 非上場株式
  • 債券
  • 公社債投資信託
  • FX
  • 貴金属としての金やプラチナなど

上場株式のなかでは、上場廃止が決定された整理銘柄と上場廃止のおそれがある監理銘柄は対象外になります。

株式投資信託のなかで対象外となるのは、信託期間20年未満の銘柄、毎月分配型投資信託、デリバティブをヘッジ目的以外で用いたものです。

新NISAの成長投資枠対象となる投資信託(非上場)の銘柄一覧は、一般社団法人投資信託協会のホームページからダウンロードできます。
一般社団法人投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品」

また、つみたて投資枠の対象銘柄は成長投資枠の要件をすべてクリアしているので、成長投資枠でも投資可能です。

投資信託なら「債券投資」もできる

投資信託は大きく公社債投資信託と株式投資信託に分けられます。

公社債投資信託は、株式の組み入れがいっさい認められない投資信託で、NISAの投資対象とはなっていません。

一方、株式投資信託には公社債を組み入れることができます。実際、おもに米国債に投資を行う「株式投資信託」もあり、NISAの対象銘柄にも選ばれています。そういった銘柄を使えば、実際のところ間接的に「債券投資」も可能です。

NISAでできる米国株式投資

つみたて投資枠の投資対象は金融庁の銘柄リストで確認できるので、ここでは成長投資枠の投資対象から米国株投資ができる商品をピックアップし、概要を解説します。

米国株(個別株式)

ニューヨーク証券取引所(NYSE)、NASDAQなどに上場する個別の株式銘柄です。

米国にはエヌビディア、マイクロソフト、アップル、ナイキ、コカ・コーラなど、直近の注目銘柄や誰もが知っている有名企業がそろっています。

株式投資のリターンは、値上がり益と配当です。情報を収集し、将来的に成長する見込みが高く、安定して収益を上げる企業に投資することが大切です。

米国ETF

米国株式市場に上場されている投資信託で、個別株式と同じように取引できます。

ETFには、S&P500やダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ)などの指数に連動して値動きする銘柄や、特定セクターの指標に連動するよう組成された銘柄など、さまざまな種類があります。

個別銘柄を複数組み入れるため分散が効き、企業固有のリスクにさらされにくいのが特徴です。その分、個別株式より取り組みやすいかもしれません。

株式投資信託

ここでいう株式投資信託は上場されていない銘柄で、日中の値動きはありません。

売買の申し込みを締め切った後に、その日の価格が公表されます。取引単価が事後的に決まるので、買入口数もその単価をもとに事後的に確定します。

特定の指標に連動する銘柄を選んだ場合、指標の動きを追うことで保有銘柄の日々の値動きがおおむねわかります。

株式投資信託には、株に加えて債券やREITを組み込むファンドなどもあるため、1銘柄でも多様な対象に分散投資が可能です。

現状では米国REIT個別銘柄への投資はできない

REITはReal Estate Investment Trustの略で、少額から不動産に投資できる金融商品です。和名は不動産投資信託で、株式市場に上場されています。

海外REITは金融庁によって「NISAの投資対象」とされていますが、2024年1月現在、米国REITの個別銘柄を取り扱っている金融機関は日本には見当たりません。

日本で販売するための法的手続きがなされた銘柄がないことがその理由のようです。

そのため、米国REITに投資したい場合は、REITに投資するETFや株式投資信託を利用して間接的に行うことになります。

米国株と日本株の違いを知ってNISAを活用しよう

NISAはあくまでも日本の制度なので、米国株の場合、米国での課税は免れません。

また、米国株は日本株と異なり、為替相場が収益に直接影響を及ぼします。

以下で詳しく見ていきましょう。

米国株の配当はNISAであっても課税される

米国株や米国ETFに投資した場合の配当は、現地において10%(2023年現在)の税率で源泉徴収されます。

根拠となるのは日米租税条約(所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約)です。

NISA以外での投資は、配当に対して国内外で二重に課税されることになります。しかし、この場合は、国外課税分を日本の税金から控除する「外国税額控除」の制度を利用して取り戻すことができます。

NISAはもとより二重課税でないため、この制度を利用できません。そのため米国株に投資した場合には、非課税制度NISAの利用者であっても米国で10%の税金を納め、その税引き後の利益を享受することになります。

一方、売却によって生じた利益(譲渡益)に対して米国で課税されることはありません。

ドル円相場の影響に注意が必要

米国株投資をする際には、一般に円をドルに換えて投資し、収益はドルから円に換えて受け取ります。

ドル高(円安)になれば、同じドル価の米国株を買い入れるために、より多額の日本円が必要です。

一方、ドル高(円安)になってから同じドル価の米国株を売却すれば、手に入る円貨はより多くなります。ドル安(円高)の場合は、その逆です。

このように、米国株投資で保有資産の価値変動を考える際には、株価の動向だけでなくドル円相場も注視する必要があります。

投資信託は為替ヘッジの有無にも注目

外国の資産を投資対象とする投資信託の場合、銘柄名に「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」と記されているものがあります。

銘柄名に記載がなくても、目論見書(投資信託の説明書)のどこかには書かれています。
投資信託を選ぶ際には為替ヘッジの有無にも注目しましょう。

ヘッジあり投資信託は価格が為替変動の影響を受けないように運用されますが、為替ヘッジを付けて運用するためには、それなりのコストがかかります。

ヘッジなし投資信託の資産価値は為替変動の影響を受けますが、その結果として損失をこうむることもあれば利益を得ることもあります。

ヘッジの有無に関しては、どちらを選ぶかは投資上の判断次第です。

いざ米国株デビュー!金融機関を決めてNISA口座を開設する

NISA口座は1ヵ所の金融機関でしか開設できません。

そのため、取扱商品の種類や数、取引手数料などを比較したうえで、口座を開設する金融機関を決めることが大切です。

金融機関によって取扱商品は違う

金融機関によって取扱商品の種類や数に大きな違いがあるため、NISA口座開設にあたっては、よく比較検討しましょう。

銀行では個別株式を買うことができないため、個別株式やETFに投資する予定があれば証券会社で口座を開設する必要があります。

とはいえ証券会社との取引を仲介している銀行も多く、銀行がまったく頼りにならないわけではありません。

手数料も比較しよう

取引にかかる手数料も、金融機関を選ぶ際のポイントになります。

米国市場で売買を行う個別株などの投資には、日本株投資より高い手数料がかかることが一般的です。併せて為替手数料もかかります。投資成果は必ず手数料分の損で始まるため、手数料は低いに越したことはありません。

頻繁に取引を行う予定なら、一般に手数料が安いといわれるインターネット専業証券会社を検討しましょう。

サポートを受けながら投資に取り組みたい方は、手数料をコストと割り切って実店舗型の証券会社で始めてもよいかもしれません。

まとめ|新NISAは米国株投資デビューのチャンス

NISAは株式投資の利益が非課税となる制度で、2024年1月に恒久的な制度として生まれ変わりました。

NISAの投資対象には米国株式も含まれるため、米国株が気になっていた投資ビギナーにとっては、始めるチャンスといえるでしょう。

新制度になっても、NISA口座は1つの金融機関でしか作れません。口座を開設する金融機関を選ぶ際は、取り扱い銘柄数や手数料を比較しましょう。

20%あまりの税金が恒久的に非課税となる新NISAを、資産形成に活用しない手はありません。



ABOUT ME
八木満里子
八木満里子
Webライター
Webライター/前職は銀行員
一般社団法人日本金融教育支援機構認定講師

「金融ライタープロ」所属
正確な記述と論理的な流れで、読者にとって読みやすい記事を執筆します。

【保有資格】
FP2級/AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)/証券アナリスト/消費生活アドバイザー
TOEIC930点/知的財産管理技能士3級 
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